特報  『東海道新幹線「こだま」700系、鉄道通たちが“わざわざ”乗る理由』


こだまは、東海旅客鉄道(JR東海東海道新幹線の東京駅 - 新大阪駅間、および西日本旅客鉄道(JR西日本)山陽新幹線の新大阪駅 - 博多駅間で運転されている特別急行列車の愛称である。列車の案内表示では青色が用いられることが多い。。 本項では、東海道新幹線開業以前に日本国有鉄道(国鉄)が東京駅 -
74キロバイト (10,468 語) - 2019年11月19日 (火) 12:14



(出典 projectphone.lekumo.biz)


東海道新幹線「こだま」700系、鉄道通たちが“わざわざ”乗る理由

現在、毎日運行する定期列車の新幹線「のぞみ」はすべてN700系である。かつて、「ひかり」「こだま」の多くは700系の運行であったが、いつの間にかN700系に当たることが増え、逆に700系の列車は時刻表で探さなければならない状況だ。ただし、時刻表には700系で運転との表記はないので、N700系と500系(山陽新幹線のみ)という表記のない列車を探すことになる。

700系は、1999年に営業を開始した第4世代にあたる形式で、走り始めて20年の今、引退の時期を迎えつつある。2019年度末には、東海道新幹線のすべての車両がN700、N700Aに統一。そして2020年夏には、新形式のN700Sの登場が予定されていて、新しい時代が始まろうとしている。

有楽町駅を通過する700系/撮影:野田隆
消えゆく700系ーー。「古きものを懐かしむ」という観点ではなく、700系の特色を今一度振り返ってみよう。ここでは技術的なものではなく、乗車する時に分かる車内サービス面での話に限定する。

豪華なグリーン車に格安で乗れる
まず、700系の特徴と言えば、禁煙の動きが広がる今となっては珍しい喫煙OKの車両があるという点だ(10号車のグリーン車、15号車の普通車自由席、16号車の普通車指定席のみ)。

JR東日本の各新幹線、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線はすべて禁煙車であり、在来線の特急列車も、寝台特急サンライズ瀬戸・出雲の一部の車両以外は全面禁煙である。また私鉄特急も、近鉄特急の一部列車に喫煙OKの車両が残る。私はタバコを吸わないけれど、愛煙家にとっては、希少価値となった自席でタバコが吸える新幹線車両がついに消えることになるのだ。

700系のグリーン車でいえば、機能的で明るいN700系グリーン車に比べると、やや暗めの間接照明がかえって高級感を醸し出していることも忘れがたい。

肘掛に収納されているいわゆる「インアームテーブル」も、JR西日本所属車の場合は、折り畳んだものを座席いっぱいに広げると、駅弁やドリンクをゆったり乗せられて気分が良い。隣席との間隔も広く取ってあり、これはグリーン車ならではの余裕だ。

700系のグリーン車/撮影:野田隆
こう書くと、「グリーン車なんて庶民には関係ない」「高いばかりで移動するだけならもったいない」という意見も聞こえてくる。しかし、「こだま」のグリーン車は、「のぞみ」普通車指定席よりも安く乗れると知ったらどうだろうか?

不思議に思う人もいるだろうから、詳しく説明する。パソコンやスマホで予約できてチケットレスで乗車できる東海道新幹線ネット予約サービス「エクスプレス予約」の会員になると各種割引があり、その一つに「EXこだまグリーン早特」というものがある。

これは、乗車日の3日前までに予約すれば、「こだま」グリーン車に破格の値段で乗れるというもので、たとえば東京〜名古屋間はおとな1人片道9000円である。同じ区間を「のぞみ」普通車指定席で行くと、11090円(正規料金)がかかるので、「こだま」グリーン車のほうが2090円も安いという逆転現象が起きるのだ。

もっとも、所要時間は名古屋まで「のぞみ」が1時間39分に対し、「こだま」は途中駅で何回も「のぞみ」や「ひかり」に追い抜かれるので、2時間50分程度と、1時間以上余計にかかる。それを時間の無駄、まどろっこしいと感じる人もいるかもしれない。確かに一刻も早く目的地に着きたいというのなら、あえて「こだま」を選ぶ人はいないだろう。

車内販売がなくても心配無用
しかし、時間に余裕があるので、のんびり車中と過ごしたいというのなら、「こだま」はうってつけの列車だ。それに、“ノロノロ”と言ったって、在来線の各駅停車よりは遥かに速い。また、東京〜名古屋間を高速バスで移動すると5時間程度近くかかることを考えれば、3時間弱というのはけっして遅いとは言えないだろう。

それに、「こだま」グリーン車は年末年始や大型連休の時期を除けば、空いている。よほどのことがなければ隣に見知らぬ人が座ることはないし、前後左右も無人のことが多いので、気兼ねなく座席を倒すこともできる。

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コンセントや無料Wi-Fi対応の列車もある「のぞみ」のように、ビジネスマンでぎっしり満員ということはなく、パソコンのキーボードの音が気になることもほとんどない。同じ新幹線でも、「こだま」グリーン車はまさに“異空間”と言える。

「こだま」は新幹線の各駅停車である。在来線とは異なるけれど、各駅停車のゆっくりした旅は、気分的に乗る者をゆったりした気分にさせる効用もあるようだ。

各駅の停車時間も全駅ではないけれど、5〜6分停まることがある。この時間を利用して、ホームに降りて気分転換を図ったり、売店や自動販売機で飲食物を買うこともできる。「こだま」には車内販売がないけれど、停車中に購入できるのはありがたい。普通車の1号車や16号車に乗ってしまうと、ホームの端なので買い物には不自由するが、グリーン車は編成の中ほどに位置しているので、その点も好都合だ。

乗車時間が長いと退屈だという人もいるだろう。しかし読書など車内ですることには事欠かない人もいるし、第一、列車旅の最大の醍醐味である車窓を眺めることをもっと楽しんでみてはどうだろうか。

ゆっくり車窓を眺める楽しみがある
絶景のローカル線ならいざ知らず、「新幹線で車窓なんて」と馬鹿にしてはいけない。東海道新幹線の車窓は意外に変化に富んで退屈しないのである。乗ると同時にわき目も振らずにパソコンに向かう行為は、新幹線での楽しみの半分以上を捨てているといったら言い過ぎであろうか。

まず、外国人なら誰もが目を見張る富士山がある。きれいに見えることもあれば、雲に覆われていることもあり、頂上付近が雪で覆われていたりと、何回通っても同じ姿ではない。静岡の茶畑を駆け抜け、浜名湖に通過するとき、夏なら一時の涼を感じて爽やかな気分になろう。名古屋を出て、木曽川、長良川、揖斐川という3つの大河を渡れば、関ヶ原を越え、右手には伊吹山が見えてくる。

こうした自然の車窓だけではなく、岐阜羽島駅付近で車窓右手に見える巨大な太陽光発電施設「ソーラーアーク」や、各所で見える謎の野立て看板「727」などの人工物も気になる存在だ。

旧三洋電機岐阜事業所に建つ太陽光発電施設「ソーラーアーク」/撮影:野田隆
謎の看板「727」。その正体は、化粧品会社「セブンツーセブン化粧品」の広告/撮影:野田隆
また、「のぞみ」であれば一瞬で通過してしまう新富士、掛川、三河安城といったマイナーな駅周辺の様子もゆっくりと眺めることができる。「のぞみ」ばかり乗っていると気がつかない家並みにも注目し、新たな発見もあろう。

こうなると、あっという間に時間が過ぎてしまう。もっとも、最初は東京駅から新大阪駅までの約4時間の旅は長いかもしれないので、名古屋あたりへ出かける時に「こだま」の旅を試みるのが良いのかもしれない。

慌ただしい日常だからこそ、少しだけ時間をかけて、自分だけのゆったりとしたひとときを過ごす。それには色々な方法があるだろうが、「こだま」で移動するというのも選択肢の1つに加えてみてはいかがだろうか。




葉加瀬(鈥)@ホーネット
@67_holmium

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2019-12-01 00:26:05

(出典 @67_holmium)