特報  『民放キー局を襲った「徳井ショック」…1週間で2番組降板の裏側』


ワイドショー同様構成のニュース番組が放送されている状態になった。 民放キー局においてニュース番組とワイドショーのボーダレス化が進み、テレビ局内の部署にも報道局とは別に「情報制作(フジテレビ),(TBSテレビ)」、「情報カルチャー局(日本テレビ)」という情報番組とバラエティ番組を制作する部署が誕生
62キロバイト (9,082 語) - 2019年10月29日 (火) 08:52



(出典 www.sankei.com)


民放キー局を襲った「徳井ショック」…1週間で2番組降板の裏側

 まさに徳井に始まり、徳井に終わった1週間だった。毎月1回、日替わりで定例社長会見を行う民放各局。放送担当記者を集めての10月末の会見は各局、お笑いコンビ「チュートリアル」徳井義実(44)の名前が連呼される展開となった。
 23日にフジテレビのスクープで発覚したのが、2009年に徳井が個人で設立した会社「チューリップ」(東京・世田谷区)が昨年末に東京国税局の税務調査を受け、18年までの7年間で合計約1億2000万円の申告漏れを指摘されていた一件だった。
 同日午後11時から緊急会見を開いた徳井。吉本から支払われる出演料などを「チューリップ」を通して受け取っていたが、東京国税局は個人的な旅行代や洋服代などを経費として認めず、15年までの4年間でおよそ2000万円の所得隠しを指摘。また、去年までの3年間は収入をまったく申告しておらず、およそ1億円の申告漏れが指摘された。追徴税額は重加算税を含めおよそ3400万円にのぼり、すでに納税と修正申告は済ませていると明かした上で、今回の不祥事の原因について、自らの「想像を絶するだらしなさ、ルーズさ」と謝罪した。
 吉本は3日後の26日、ホームページで「チュートリアル徳井義実の税務申告漏れに関するご報告」と題し、同社が調査した詳細について発表。当面の芸能活動自粛を決定した。
 そんな騒動の渦中に次々と開かれたのが、徳井の「ルーズさ」の最大の被害者である民放キー局トップの会見だった。
 各社が吉本所属のタレントに振り回されるのは、これが今年2回目。6月上旬、写真誌「フライデー」の報道により、振り込め詐欺グループの忘年会に出席していたお笑いコンビ・雨上がり決死隊の宮迫博之(49)やロンドンブーツ1号2号の田村亮(47)ら吉本興業所属の芸人らが謹慎処分になった闇営業問題が勃発。両者の出演シーンのカット、番組の放送延期などに追われた闇営業ショックの記憶も新しい中、勃発したのが、徳井ショックだった。
 まず、吉本の処分が下る前日の25日に行われたフジテレビ・遠藤龍之介社長(63)の定例会見。「TERRACE HOUSE」(月曜・深夜0時25分)、「乃木坂46のザ・ドリームバイト!」(火曜・後11時半)という徳井出演の番組2本を持つ同局として、編成担当の石原隆取締役は「昨日の(徳井の謝罪)会見を受け、新しい事実も出てきていますが、さらに事実関係を確認した上で来週の放送については検討したいと思います。現在、確認中です」とした。
 また、遠藤社長は「刻々と新しい事実が出てきていて、現在、確認中です。本人も(会見で)ルーズだとおっしゃっていたが、こういうことはきちんとしていただきたかった」と、苦言を呈した。
 最も被害甚大だったのが日本テレビだった。徳井が「今夜くらべてみました」(水曜・後9時)、「衝撃のアノ人に会ってみた!」(水曜・後7時)に出演中。相方・福田充徳(44)とのコンビでも「人生が変わる1分間の深イイ話」(月曜・後9時)と「しゃべくり007」(月曜・後10時)に出演中だった。
 28日の定例会見で小杉善信社長(65)は「今回の件に関しましては、社会的に影響のある方なので、その方が国民の義務を果たしていなかったのは大変、残念。悪意があるなしでなく、結果責任を見ていかないといけないと感じています」と厳しく断罪した上で「日本テレビとしては吉本興業の対応を見て、これから収録する番組は当面見合わせ。収録済みの番組は最大限、配慮して放送する。配慮というのは編集面でということですね」と続けた。
 編成担当の福田博之取締役は社長の発言を受け、「編集面での対応ですが、モザイクをかけてということではないが、普通の番組と見た目が違う感じになります」と説明。「ウチはレギュラー番組が多いので、それぞれ対応している。自粛期間を吉本からうかがっていないので、撮ったものは数本あるが、どこまで対応するかはまだ決まっていない」と話し、「テロップでの対応はします」と続けた。
 また、闇営業問題に続く今回の問題での吉本への対応について聞かれた小杉社長は「吉本興業さんとは前回(闇営業の際)に申し入れ書を出して、先方とのやり取りをした経緯がある。今回も国民の義務などに関して、社会的責任のある出演者に対してのガバナンス(企業統治)をきちんとして欲しいと申し入れています」と、先週の段階で吉本サイドに申し入れをしていたことを明かした。
 そして、最も早く重い決断を下したのが、TBSだった。30日の佐々木卓社長(60)の定例会見。同社長は、まず「大変、人気のあるタレントさんであり、テレビの前の皆さんにも大きな影響力のある方。しっかりとしていただきたかったなあと大変、残念です」と沈んだ声で話した。
 合田隆信編成局長は徳井出演の2番組について、「明らかになった事実関係を総合的に勘案しまして、2本とも降板とさせていただく決定をいたしました」と発表した。
 同局では、徳井が出演中の「人生最高レストラン」(土曜・後11時半)については、11月2日放送分を出演シーンをカットして放送。26日は放送を取りやめ、スポーツ番組に差し替えていた。
 24日にスタートしたばかりの「ダブルベッド」(木曜・後11時56分)は初回放送分は徳井の出演シーンが放送されたが、31日以降は出演シーンをカットして放送するとしていた。しかし、今回の降板発表。キー局の中で“徳井斬り”を発表したのは同局が初となった。
 問題発覚1週間にして早くも2番組を失った徳井。私は、その整ったルックスと裏腹の根っからの天然ぶりに落語界で「フラがある」と表現される独特の魅力を感じてきた。言うならば、「ふっと笑いたくなるような何とも言えないおかしみ」―。06年のM1優勝時から、その独特の間に惹かれてきたが、事はそんなのんきな問題ではなくなってきた。
 24日には、フジテレビが09年に「チューリップ」を設立してから18年までの9年間、徳井が一度も期限内に納税しておらず、指摘を受けるたびに申告していたと報じた。朝日新聞も25日付けで「チューリップ」が法人税約3700万円のほかに、消費税と源泉所得税計約6500万円の追徴課税を受けていたことも報じた。
 CMに出演していた家電量販店「エディオン」と商品キャラクターに起用していた寝具の「東京西川」は即、CM放送を見合わせる処置を取り、徳井がボーカルを務めるバンド「鶯谷フィルハーモニー」が出演予定だった大学学園祭での公演は中止になった。
 そして最大の被害を受けたのが、低視聴率にあえぐ、あの国民的ドラマだった。
 NHKは29日、徳井について、新たな出演、収録をすべて見合わせると発表。特に放送中の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(日曜・後8時)に徳井は64年の東京五輪で金メダルを獲得した女子バレーボール日本代表監督の大松博文氏役で出演。11月3日の回から出演シーンが放送される予定だった。
 「いだてん」について、「既に収録が終わっている番組については、可能なものについては出演シーンをカットする措置を取ります」とNHKは発表。すでにクランクアップしているため、「撮り直しが困難な状況ではありますが、ドラマの流れを損なわない範囲で、対応可能な措置を講じたうえ、放送する」とし、徳井の出演シーンを可能な限りカットして放送することになる。
 番組のホームページには出演者として徳井の名前が残されたまま。放送でのテロップ表記についても「ホームページと同じ扱いになると思います」(同局番組広報部)としており、名前こそ残されるが、残り7回分の再編集がどれほど困難な作業になるのか。想像するだけで、NHK制作陣に同情したくなる。
 その「フラ」に惹かれていたと明かしてしまった通り、今回の騒動で、私は徳井に対して甘かった。私自身の中にもたっぷりある“徳井的な部分”。「あ~、〇〇するのが面倒くさい。やめたい。面倒くさいことは後回しに、できれば人任せにしたい」―。徳井の今回のルーズ過ぎる納税への意識、甘過ぎる謝罪会見の際、そんな自分自身の甘さ、弱さとの共通点をいくつも感じてしまったのは事実。「そこまで責めなくても…。追徴課税も納め、修正申告もしているし―」とも不覚にも思ってしまっていた。本当に申し訳ない。
 しかし、そんな鈍感な私ですら、民放各局トップの苦悩の表情を見た時、くっきりと浮かんできたのが、その後ろにいる徹夜作業で再編集を行うであろう何百人もの制作スタッフの顔、そして顔の数々だった。
 法人税に加え所得税、消費税、社会保険料まで未納だったことが発覚した徳井。電気、ガス、水道代も滞納し、レンタルビデオ店「TSUTAYA」の延滞料金が10万円を超えたことをネタにしたこともあった。
 しかし、もはやネタでは済ませられない、まさにシャレにならない状況となっている。各局は予定されていた番組への起用を迅速に控えた。今回の活動自粛によって生じる違約金、再編集作業にかかる経費ももちろん生じる上、損害賠償金は吉本ではなく、節税対策で設立したはずの「チューリップ」に請求される。
 国税局の調査を受けた直近7年間の追徴税額は法人税3700万円、源泉所得税4300万円、消費税2100万円で、合わせて1億円を上回る規模だったとされる。今回の件で吉本の監督責任を問う声もあるが、そもそも吉本が徳井及び「チューリップ」のルーズ過ぎる税務まで監督するのは不可能だろう。
 23日深夜の会見で「芸歴25年くらいになるんですけど、今まで一生懸命働いてきたものが自分のだらしない愚行によって、築き上げてきたものを自分でゼロにしてしまった」と後悔した徳井。「想像を絶するだらしなさ、ルーズさ」の代償は、あまりにも大きい。

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