特報 『世界初の実証実験 豪州→神戸9000キロ、液化水素を運搬』


液体水素(えきたいすいそ)とは、液化した水素のこと。沸点は-252.6℃で融点は-259.2℃である(重水素では、沸点-249.4℃)。水素液化は、1896年にイギリスのジェイムズ・デュワーが初めて成功した。 ロケットエンジンの推進剤として利用され、LH2(Liquid H2)と略称される。液体水素
9キロバイト (1,235 語) - 2019年10月2日 (水) 14:57



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水素自動車 現状と課題

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世界初の実証実験 豪州→神戸9000キロ、液化水素を運搬

次世代エネルギーとして期待される水素に関する新たな試験事業が2020年度、神戸で始まる。川崎重工業などは専用船を使い、豪州-神戸間の約9千キロで液化水素を運ぶ世界初の実証実験を開始。豪州で豊富に採れる褐炭(かったん)から水素を生成し、液体状にして神戸まで運ぶ。兵庫の拠点では運搬船や貯蔵タンクの製造に加え、神戸空港島で荷役拠点の建設も進んでいる。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が支援する水素供給網構築に向けた事業の一環。豪政府の協力も受け、川重や岩谷産業など6社で構成する技術研究組合が、褐炭のガス化▽液化水素の長距離大量輸送▽液化水素の荷役・貯蔵-の実証を行い、30年の商用化を目指す。

 褐炭は世界的に埋蔵量が多く、今回採掘する豪南東部のラトロブバレー地区だけでも、日本の総発電量の240年分を賄えるとされる。一方、乾燥すると自然発火しやすいため輸送が難しく、現地では発電用途にしか使われていない。その分安価で調達でき、コスト面は風力発電より安く、太陽光と同程度という。

 今回の実証は、豪州で褐炭から生成した水素ガスを零下253度まで冷やして液体にする。体積を800分の1まで圧縮し、専用タンクに入れて16日間かけて神戸まで運ぶ。

 タンクは播磨工場(兵庫県播磨町)で造られ、長さ25メートル、高さ16メートルの楕円(だえん)形。1250立方メートルの液化水素を詰め込める。特殊な内外二重構造を採用し、真空性や断熱性を高めた。運搬船は神戸工場(神戸市中央区)で建造し、実験船は全長116メートル、幅19メートル。商用向けは全長300メートル級を想定する。タンクを搭載し、20年半ばの完成を見込む。

 神戸空港島の荷役基地には直径19メートルの貯蔵タンクのほか、船から液化水素を移すアームを備える。運ばれた液化水素は精製不要の高純度で、すぐに燃料電池に供給できる品質を見込む。

 川重は18年、神戸・ポートアイランドで水素から発電し、電気と熱を供給する実証試験に成功した。水素事業は挑戦分野に位置づけ、30年に全社売上高の5%を目指す。川重は「液化水素の運搬は世界でも前例のない試み。大規模な水素供給網の構築に向け、鍵となる事業」としている。

■市場拡大30年度に4085億円予測

 利用時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素。環境に優しいエネルギーとして、脱炭素化と地球温暖化防止という世界的ニーズに合致する。国も基本戦略で積極的に利用拡大を進めるが、コスト面などが課題になり、水素で走る燃料電池車(FCV)の普及は思うように進んでいない。

 水素は無色・無臭・無害で空気よりも軽い。エネルギー利用では、現状は化石燃料から製造されている。将来的には水の電気分解などを利用し、CO2を生じない製造法が期待されている。

 国は基本戦略で、2030年ごろに水素価格を現状の3分の1以下に下げ、FCVを80万台、補給基地の水素ステーション(ST)を900カ所に広げる目標を掲げる。調査会社の富士経済(東京)は、30年度の水素燃料関連市場を18年度比56倍の4085億円まで拡大すると予測。25年度ごろからは水素発電の需要が劇的に伸びるとみる。

 FCVでは、トヨタなどが専用モデルを販売。だが車両価格が700万円程度と高い上に水素STが少ないため、18年までの国内販売台数は計2933台(日本自動車工業会調べ)にとどまる。同じく環境に優しく、安価な電気自動車に比べて普及の動きは鈍い。

 今年9月の国際会議では、今後10年間で世界のFCVを1千万台にする目標が掲げられた。川重の西村元彦・水素チェーン開発センター長は「まず水素STのオーナーがもうかる仕組みをつくり、安心して燃料補給できる環境を整える。水素発電も普及に向け、国はCO2削減に貢献した企業への税優遇などを検討すべきだ」としている

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